延々続く「八三論」お付き合いありがとうございます。下書きの段階で20,000文字、軽く突破しております。おかげさまでこれでまとま…ったつもりだけど、詰めが甘いなあ。愛故の文字量、愛故の詭弁、愛故の画面開き過ぎのパソコンフリーズ、ワード真っ白、突然落ち…(涙)。
…愛とはなんと罪深きもの。
『最遊記』における「受け」キャラとして三蔵を、「攻め」キャラとしては八戒を推した。
このふたりのカップリングとは、どういうものであろうか。
三蔵は孤高のキャラクターである。
幼少期に自分を愛してくれた養い親を目前に惨殺され「自分が何より大切にしたかった人を守れなかった」という傷を精神に持つ。「守れなかった」自分を苛み、それゆえ「殺されても死なない奴ら」を求めた。ずっと自分の身近にいて、安心感を得られる人物を欲しがっていた。しかし自分自身には、甘えることを許していない。安寧の日々など、期待していない。
八戒は独占のキャラクターである。
愛情の対象を目前に喪い、人間でなくなるほどに流血の狂気に身を委ねた。しかし彼は、もう一度愛情の対象が奪われるようなことがあったら、もう一度狂気に身を投げるだろう。何度でも狂気に落ちるだろう。後悔することがあっても、反省して諦めるということをしないだろう。その業の深さは、死の瞬間まで変わることはないのだろう。
共に自虐的な性質である。しかしこの自虐的三蔵に自虐的八戒が執着したら…なんとも深みな恋愛になるのではないか。
自分自身に対しては、大して執着心のなさそうな三蔵である。彼の言う「守らなくてもすむ」奴とは、三蔵自身が安心出来る存在である。その安心感の持てる相手に、しつこくしつこく求められたら、案外諦めてほだされてくれそうなものである。(ただ、同時期に複数求愛されたら、もしかしたら複数断り切れない…という可能性もあるが)その代わり、一度心身共に関係を持ったなら、永続を願うタイプだろう。三蔵が「無一物」を唱えながら非執着に徹していないことは、経文探しが旅の目的であることなどからも明かである。
八戒も、一度執心したら諦めるということをしない人であろう。とにかく延々思い続けるだろう。もし自分の手に三蔵が入るということがあったら、二度と離すことなどしないだろう。自分と運命の相手の間を引き離そうとするものが現れたら、攻撃的にあらがうだろう。
美貌のクソ坊主三蔵が、八戒にのみ穏やかな感情を表し、八戒が手料理で餌付けるほのぼの系ストーリーの83から、ふたりが求め合い癒し合うスウィートセンシティヴなストーリーの83、果ては自虐三蔵と自虐八戒の銀線同志がこすれ合って火花を散らしそうなオトナ向けストーリーや、純愛、どろどろ、まったり…様々なパターンが予想される。しかも罪深き恋愛を、罪深き八戒が、聖職者を罪深き道へと誘う形で表れるのである。
切ない。
どんなにまったりしたストーリーにしたとしても、切なさの成分が入るのである。この切なさは、恋愛の構成成分のうちで、最も訴える力の強いものではないだろうか?
実際に心臓あたりがきゅうっと苦しくなるような、痛みを感じることがあるだろう。掻きむしるような、または甘酸っぱい気分というものが、肉体の記憶としてあるだろう。恋愛でも、友情でも、親子愛でも、ヒトとの関係において、そういう感覚を持ったことがあるだろう。
その切なさを刺激するのが、八三である。
少女の擬似恋愛の場から、実際の恋愛に疲れたOLから、いーかげん女忘れかけちゃいそうなお母さん(すいません、自分のことです)まで、恋愛の醍醐味である切なさを堪能させてくれるのが、八三である。恋愛の罪深さを学習させ、思い起こさせてくれるのが、八三である。
ゆえに、八三は王道なのである。
ここまで読んでくださった、お嬢様、お姉様、奥様方。どうぞこの切なく罪深い八三の道を共に歩みましょう。この快楽を、共に分かち合いましょう。ワタクシたちの選択は、やおいと謂えども恋愛を追求し、または楽しむ者にとっては、大変奥深いものとして正しいのであるのだから。
よしき かおり
2001.02.06
ええ、蛇足です。でもでも、どしても追加です。
八戒と言えば、幻惑の石田ヴォイス。OAV、ラジオドラマ、TVアニメに通して出演なさっている、石田さん。石田さんと言えば、思いっきり受け声というのが定説(?)ですが…。
ラジオドラマの石田八戒さんの、魅惑の美人声テノールの抑揚に、めくるめく快感を覚えてしまった私です。ものの試しに、作画の出来に不満がありがちだった『幻想魔伝』のビデオを、目を瞑って鑑賞してみました。
最終話近くの対紫鳶の言葉責め「あなたは…卑怯者だー!」はうーっ!
…自嘲セリフだの、にっこり笑ってザックリなセリフだの、お馴染みの「まあまあ」だの…。あのやわらかテノールが、快楽中枢に絡み付いて来るような、真綿で締め付けて来るるような、錯覚を覚えます。
「八戒さんの声で言葉責めして欲しい…!」
M気質のある方は、ご賛同していただけるものと思います。
「あの綺麗で優しい声で、うんと意地悪く、窘められたり質問されたりしたい…(神奈川県 32歳 主婦)」…誰ですか、こんなことコクハクしちゃってるのは?
石田声ある限り、八戒さんは責め責めな攻め様です。以上(笑)。
2001.08.05追加