ハッカイドール購入記念小説(笑)
■■■ 『ハッカイくん 〜八戒編〜』
presented by いちうあいさん
午前三時。
しんと寝静まっている宿屋に八戒は戻ってきていた。
酒場は祭最後の夜ということで今でも結構賑わっていたが、悟浄が、どうせ明日になったら三蔵はすぐにでもここを出るって駄々をこねるだろうし、後のことは自分が何とかするから今日は早く宿に戻って寝とけ、と言ったので恐縮しながらもそれを受け入れる事にしたのである。
なにしろ3日3晩不眠不休で働き続けるとさすがに八戒でも疲れが溜まってくる。それにこの3日三蔵の顔を一度も見ていないということが結構ストレスになってたりもした。
どうせ寝ているだろうけど、せめて一目だけでも彼の顔をみて休むことにしよう、と思いつつ急いで宿に戻ってきたのである。
なるべく音をたてないようにして、自分と三蔵に割り当てられたはずの部屋に向かう。ノブを回す時に鍵が掛かっていたらどうしようか、と不安に思ったがすんなりと戸は開いた。ほっとすると同時にちょっと不用心だな、と思いつつ部屋の中へと入り、静かに戸を閉める。
すでに闇に慣れた目で中にいるはずの三蔵の姿を求める。すぐに金の輝きが目に入った。毛布はかけていたが、うつ伏せになって顔を少し横に向けたまま寝入っているその姿から、どうやら悟浄が覗きに来た時からずっと目覚めてはいないらしい。
もっとも諸事情あって、悟浄は部屋に入ったことを八戒には伝えてなかったのだが。
よく寝ちゃってますね、とちょっと残念に思いながらもぐっすりと寝こんでいる三蔵の姿を見てつい微笑んでしまう。仕方がないから自分ももう休もう、と思って首を廻らした八戒は驚きに目を見開いた。
三蔵の目に触れないようにとしていたはずのサンゾーとハッカイが仲良く三蔵の枕もとに並んですわっているのである。
一体これはどうしたことなんだろうか。あれほど嫌がっていたというのに。
二つの人形に近寄ると、気のせいだろうか、ハッカイの方がなんとなく薄汚れているような気がする。月明かりだけではよくわからなかったが。
さすがに八戒も千里眼の持主ではないから何があったかなんてわかるわけないが、この人形たちと三蔵との間で何かがあったんだろうとは推測できる。
そしてこうやって彼は二人の姿をした人形を並べて置いてくれている…。
いいようのない嬉しさがこみ上げてきて八戒は三蔵が寝ているベッドの脇に膝をつき、彼の顔を覗き見た。静かな寝息をたて、そして着の身着のままで寝込んでしまっている三蔵の姿に愛おしさが込み上げてくる。
自分に似た人形を作ったのは、サンゾーが一人ぼっちでなんとなく寂しそうに見えたからなのだ。サンゾーはその姿を似せた人と同じで、孤高を保ちたがるくせに、置いていかれるのを嫌がっている。そんな風に見えたから。だからそんな彼の側にずっといるために、いさせてもらうために自分に似た人形を作ったのだ。
そんな思いを知ってか知らずかこうして二人隣り合わせて置いてくれている。それだけで八戒は幸せな気分になった。
それと同時にこの三日、彼を一人にさせてしまっていたことを後悔した。
「すみません、三蔵…。」
小さな声で呟いて金糸の髪をかきあげてその頬に口付けする。
目を開けてくれないかな。
その紫暗の瞳を見せてくれないかな。
そうしたらもう絶対に離しはしないのに。
淡い期待を心に持って三蔵の髪を撫で続ける八戒だった…。
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八戒さんったら、イッタイ何時の間に作ったのでしょう…
やはり八戒さんです。八戒さんにしか為し得ません(笑)
……三蔵サマ、なんだかご苦労なさっていらっしゃるのかしら?
木登りした挙げ句のあどけない寝顔…なんだかとても楽しいです
ってーか、八戒さん………ああ、何も言えない……