水蓮さん、よしき八戒ドール購入記念小説(笑)
■■■ 『ハッカイくん 〜悟浄君の事情編〜』
presented by いちうあいさん
そこにはすやすやと眠る三蔵がいた。
いつもの眉間に皺をよせたような表情はなく、あどけなささえ感じさせてただ眠りの園をさまよっている。
悟浄はただその寝顔にを見入られていた。
――― 反則だ ―――
太陽(ひ)が落ちてきて赤い色彩が三蔵の姿を美しく浮き立たせている。それなのに、可愛いとさえ思えるその寝顔。
これは反則だ。
悟浄は我知らず三蔵の傍らに立ってその顔を覗き込んでいた。八戒が三蔵のことを想っていることは知っているし、三蔵とても同じであることを知っている。だから自分は理解し、二人を応援してやろうと思っている。それは今でも変わらないはずなのに。
体がいう事を聞かない。
無意識のうちに顔を寄せ、そして唇を三蔵のそれに近づける。
後少しで触れ合う、というその時―――。
ピキーーーンッッ!!!!
「はうっ!?」
凄まじい冷気が悟浄の動きを凍結させた。熱が一気にさめ、脂汗が体中を伝う。
それはとてもよく知ってる冷気、というか殺気だった。過去何度か感じたことがあり、その都度とんでもない目にあっている。
ギ、ギ、ギ…と悟浄は首を横に向けた。
そこには「ハッカイくん」が笑顔で座っていた。多分、笑顔だと思う(笑)
「ま、待った、タンマ!お、俺は別に…。」
別にポルターガイストよろしく人形が動き出したとか、笑い声をあげたとか、血の涙を流したとかそういうわけではない。しかし悟浄はまるでそこに件(くだん)の人がいるかのように焦って弁解をしている。
「ハッカイくん」はもちろん返事をすることもなく、カタカタと動き出すこともなく、気孔を放つこともなく、ただ其処にあっただけだが、それでも刃のような冷気がひしひしと感じられるのはなぜだろう。
「あ〜、ほら、このままだと風邪ひくからさ、ちょっと毛布でもかけてやろうかと…。」
悟浄は傍らにあった毛布をすばやく三蔵にかけてやると、これまた風のように素早く三蔵から飛びのくようにして離れる。 だが、まだどこか刺すような空気が漂っていた。
「いや、なんだ。そんな怖い顔すんなよ。な、何にもしてないからさ…。ハ、ハハハ…。そ、それじゃ俺酒場に行ってくるわ。」
冷や汗をだらだらと流しながら悟浄は大慌てで部屋から飛び出していった。
悟浄が出ていくと同時に部屋の中は、アラスカの厚い氷の下の冷水に叩きこまれたかのような雰囲気から穏やかなる空気にへと変わっていった、ような気がする。
<おしまい(笑)>
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ややや、やはりいちうごじょは……(笑)
今日は惜しいところだったねえ、ごじょさん
明日こそ頑張れ悟浄さんだわ
(っていうより、ハッカイくんを怖いと思うべきなのかしら…?/笑)