presented by 神慮願さん
 その手をひいて 
おひさしぶりの街に来ました。
今日はお兄ちゃんとお買い物です

ごくぅはお腹が空くからってお部屋で おねむさんです
ごじょぅはどっかでお姉さん見つけてついて行きました

いつものことだって言ってました。




いつもと違ったのは・・・。
たぶん・・・






部屋の中でジープと遊んでいるれん
すると、部屋をノックされる
「れんちゃん お買い物行きますけど
 一緒に行きますか?」
「はいv」
ジープをベットに寝かせ布団を掛けてあがると
“キュ〜ゥ”と眠そうに声を上げ眠りに入る
軽く頭を撫でてから出してあったコートを羽織り部屋を出ていく

トコトコと部屋を出ると廊下には八戒と三蔵がなにやら
話をしていた
一番最初にれんの存在に気がついたのは三蔵の方だった

「来たか・・・ほら、ちゃんとコート着ていろ」
「みゅぃ」
コートのボタンを締められる
「じゃぁ 行きましょう」
「ん?今日はさんぞぅも一緒?」
「悪いか?」

フルフルと首を振り満面の笑みを浮かべた


街は人々でごった返していた
随分と妖怪の影響を受けていない街
市場の品揃えも申し分なし

「わぁ 人いっぱい」
「迷子になるな!」
「はぐれないで下さい!」

「うん・・・あれ?」
さっきまで後ろを歩いていたのに・・・居ない
「お兄ちゃん?」
呼んでも返事が来ない
何処にもいない

周りは
知らない場所
知らない人々

ザワザワと街の者達や外音はするけれど
れんにとってはまるっきり知らない物ばかり

「お兄ちゃん!!さんぞぅ!!!!」

泣き出しそうな声を上げて2人の名を叫ぶと
人混みの中からいきなり腕を捕まれた
ビクッとしながら振り返ると

「このバカ!!離れるなと言っただろが!!!」
「ダメじゃないですか、勝手に歩いちゃ」
「・・さんぞぅ・・・お兄ちゃん」
2人の姿を確認すると安心して

「恐かった〜ぁ」
泣き出した・・・。

思わず顔を見合わせため息を吐き
ひとまず視線が気になるため・・・れんを持ち上げその場を退散した



暫く行くと人混みも消えて
どうにか3人で歩ける道幅

三蔵の法衣を握り締めてはまだ泣いているれんを見て
八戒はれんの視線まで屈みやんわりと髪を撫でながら
「僕はこの店で用事を済ませてきますから
 入り口の所で待っていてくれますか?」
「・・・うん」

そう言うと三蔵の法衣から手を離す
「すぐ戻ってくるから 待っていろよ」
三蔵もそう言い残して八戒と共に店に入っていく


ぽつんと店の前に残されたれんは
さっきよりも幾分も少なくなった人混みを見ていた

忙しそうに道を歩くおじさんや
道の横にたむろって話し込む若者
今晩の夕飯は何にしようかしら?と歩くおばさん

しかし れんの視界に入ってくるのは
楽しそうに手を繋いで歩く親子連れ・・・。

優しそうな細いお母さん手
暖かそうな大きいお父さんの手

れんはその手のぬくもりを知りません・・・。
どんなモノか触れたことはありません・・・。

かけられる笑顔も
その言葉さえも何も知りません

そっと自分の掌を見る
「暖かいのかなぁ・・・」

知らないモノ
解らないモノ
持っていないモノ・・・。


「おとう・・さん・・・おかあさん・・」
「はい?」
「何だ?」

ビク?!!!
不意に口にすると真横から声をかけられた
呆然としたまま顔をあげるとこちらも不思議そうに
首を傾げている八戒と三蔵・・・。
どうやら聞こえてはいなかったようだ
ホッと息を吐くれんを見ては顔を見合わせる

「何でもないです〜」

そう言ってポテポテと先を歩く
その様子に何でもないモノだと思い2人も歩いていくと
立ち止まってれんを見つける
ジッとその先にあるモノを見ている


寂しそうに
悲しそうに


「お父さん ちゃんとキャッチしてよ!!」
「よぉし!!お父さんに任せろ」
「ほらほら 気を付けないと怪我しますよ」

公園で遊んでいる楽しそうな一家の風景

「そう言うことですか・・・」
「ふぅ・・・」
ため息を吐く三蔵を横目にクスリと笑うと
きつく睨まれた

「何だ」
「いえ、それよりもどうにかしてあげましょう
 僕ら娘の為に、ネv」

何も言わず顔を赤くしてそのまま言行ってしまう
否定されることはなかった八戒はクスクス笑ってその後に続く
「今回だけだ」
「え?」
ぐいっと左の掌を三蔵に捕まれ

「よかったですね」
「え?」
反対の掌を八戒に捕まれた

「い〜っせ の、で!!」
「!!」

かけ声と共に小さな体が前後揺れる

始めは何事か解らずただおたおたしていたが
状況が解り始めると楽しそうに笑い足をバタつかせる

「終わりだ」
そう言って地面に足がつくと
クイっと三蔵の手を引いては

「もう一回!!!」
「疲れた」

「ヤァ!!もう一回!!」
「・・・。」

ったくと言ってはその可愛い要求には勝てず
「わぁ〜いv」


暫くするとまた地面に足がつく
「もう一回!!」
「またですか〜」

「もう一回!!!!!」


「「・・・・。」」




最後は宿に着くまでやらされた・・・。










小さな心にやわらかく告げられる
   “愛しい気持ち”

体温はその手から伝わった








 end 







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◆ note ◆
神慮願さんの「小さな楽園」様700カウンタを踏んで、83+おテテぶら〜んを書いて頂きました
「小さな楽園」オリキャラれんちゃんが可愛くて、大好きなんです
小さい子と一緒の、八戒、三蔵、悟浄、悟空…ほのぼの親子兄弟ものみたいv
神慮さん、とてもふわふわ暖かいお話を、どうもありがとう