サンゾーくん騒動があって、暫く経ってのことだった。
とある村で一泊、ということになり、宿をとる。
またしても二人部屋二つということになったが、悟空製作アミダクジにて三蔵・悟空、悟浄・八戒という組み合わせになっていた。
八戒は買出しで出かけており、悟浄は一人、ぼんやりと天井を眺めながらタバコをふかしている。
やがて立ち上がって部屋を出ようとした悟浄はふとあるものを目にした。
それは八戒の荷物だったのだが、几帳面な彼にしては珍しくカバンの口が開いている。開いているというよりは中に入っているものが大きすぎて閉まらない、といったほうが正しいようだ。
ちらりとなにかが見え、何故となく悟浄はそれが気になり近付いていく。
それは透明なケースだった。
八戒の荷物に手を出すと後で何を言われるか、という恐怖はあったが、この時は好奇心の方が勝ってしまったようだ。手を伸ばし、それをカバンの中から取り出す。
その中には・・・サンゾーくんが大事そうに入れられていた。
思わず悟浄は”ゲッ”というような表情をする。これのおかげで結構すったもんだがあったし。巻き込まれるこっちの身にもなって欲しい、などと思いながら悟浄はサンゾーくんをケースから出した。
しかし本当によく出来ている。
改めて親友の器用さを感心しつつサンゾーくんを眺め回していた悟浄だが、ふと経文に手を伸ばした。どうやら着脱可能なようである。
「ははっ、まったく芸が細かいね、あいつってば。」
経文を手に持って振り回していた悟浄だが今度は何の気なしにその帯に手を掛ける。それはスルリとほどけ、そして・・・着物がハラリとはだけかけた。
「?悟浄ってばまた何か三蔵怒らすことやったんですかねぇ。」
買出しから帰ってきていた八戒はその音を聞いて首をひねる。
腕一杯に抱えられた荷物の中には、サンゾーくんお着替え用の材料が山のように入っていたとか。
<おしまい>