amazing grace
「そろそろ眠りますか?」
「いや、まだいい」

「寒くないですか?」
「別に」

「台所お借りして、エッグノッグ作って来たんですけど、じゃ、いらないかな」
「…貰う」

「熱過ぎました?」
「いや」

「甘過ぎませんか?」
「丁度いい」

「………」
「美味いよ!美味いって言えばいいんだろうが!」

「静かだと思ったら、雪が降ってますよ」
「……」
「また散文的なこと、言おうとしました?」
「…いや。雪は好きだ」

「ねえ、冬生まれの誰かさんは、雪みたいに真っ白できれい」
「普段、生臭だの何だの、散々言ってるクセに」
「本当はきれいだって知ってるから言えるんです」
「…エッグノッグ、お代わり」

「うっすら積もってきましたね」
「ああ。ジープで移動するのに難儀でかなわんな」
「先刻好きだって言ったのに」
「実際困るんだからしょうがない」

「…でも僕は好きですよ。
 寒い中、手を繋いで歩いたり、真っ白な雪に足跡付けて歩いたり。
 足跡がふたつ並んでたりしたら、嬉しいじゃないですか」
「オレはしないからな」
「どうしても?」
「どうしても」
「絶対?」
「絶対にだ!」

「そろそろ眠いんじゃないですか」
「ん…。いや」
「体温高くなって来てるし」
「…あのなあ」

「今日は、オレの誕生日だ。てめェのじゃない。
 オレはいい年こいて、そんなモノは嬉しくないんだ。
 喜んでるのは、て・め・ェ。
 オレの誕生日が終わるの、残念そうにしてるのも、て・め・ェ・だけ!
 眠いの堪えて付き合ってやってんだから、ぐだぐだ言ってんじゃねえよ」
「三蔵…。頬、赤いですよ」
「この莫迦っ!」

「そろそろ日付が変わりますね」
「ああ」
「終わるのが何だか勿体ないって思ってたんです。
 あなたの生まれた日が」
「この後、何十ぺんも来るぞ」
「何十ぺんも、一緒にお祝いしていいですか?」
「勝手にしろ」
「百ぺんでも?」
「…寝るぞ」

「今日、クリスマスみたいですね。
 あなたの生まれた日には、ぴったりかもしれない」
「八戒、オマエ…。
 教会育ちのクセに、かなりな罰当たり者なんじゃないのか?」
「マリア様は好きでしたよお?
 ………でも、僕の罪を……ってくれたのは………」
「ん?」
「僕に生きろと言ってくれたのは、三蔵、あなたです」
「……」
「生きる力をくれるものが、神でも、神の息子でもないのが、僕には救いだった。
 人の子の与えるものの強さと大きさを教えてくれたのは、あなたです」
「……」
「僕にも、まだ何か出来るのかもしれないと思えたのは…」
「……」
「……三蔵?もう眠っちゃいました?」

 今日が終わる
 朝日が昇れば、一面真っ白な世界が僕達の前に開けているのだろう
 僕達は、黒々とした軌跡を残して進む
 明るくましろな世界へと、足を踏み出す













+-- fin --+



そして、あなたに会えた amezing grace に…

the first aniversary of
club "Are you 83LOVER ?"
2001.11.29
Thank you !








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