◇ 子猫日記 3 ◇




○月 ○日(晴れ雨)

 ずいぶんと、あったかくなりました。
 三蔵は、よくくしゃみをします。
 せっかく、ちかくのおうちに金魚が来たのに、くしゃみばっかりでにがしてしまうので、三蔵はとってもくやしそうです。
 おにわの中に、つやつやきれいな水ばちがあって、そこにはまあるい葉っぱがういてます。
 葉っぱにかくれて、小さな赤い金魚がにげます。
 長いしっぽが、ひらひらすると、ぼくたちはお腹がぎゅうっとなります。
 なんてきれいでかわいくて、おいしそう。
 ぼくは金魚のはちの上にのって、よく金魚をさがします。
 じっとうごかないでいると、金魚はぼくがいないと思うみたいです。
 そうなると、ぼくは、やったあと思いました。
 金魚がちかくに来たときに、爪でぴゅってひっかけます。
 じょうずにやると、金魚がすくえて、おっこちてぴちぴちってなります。
 三蔵がやると、くしゃみで金魚がにげてしまうので、いつまでたっても、金魚は三蔵に気がついたままです。
 三蔵は今日もぷりぷりでした。
 でも、しらんぷりで、あとからいつもよりていねいに、爪をといでました。
 かわいそうなので、ぼくも毛づくろいを、ていねいにしてあげました。


へっくし!へっくし!……っあーーーーーー

お? 三蔵もくしゃみしてんのか?お前も花粉症か?
ったく、堪んねーな、こりゃ
お、おい。こっちに鼻水飛ばすな!
八戒に掛けてやれ!


○月 ○日(曇り)

 三蔵がくしゃみするのは、ぼくのせいじゃないと、ぼくは思います。
 でも三蔵は、ぼくにふーってしました。
 まだ金魚とれないくせに。


駄目。鼻水と共に、運が流れ出てく。
きれいなお姉ちゃんと縁がない。
近所のばばあとばっか目が合うのは、気の所為か?
射程範囲から30年も外れた婆さんと目が合っても、嬉しくも何ともないのよ。
へっくし!……ああ、ティッシュはやっぱカシミアだな。
……何で八戒ばっかり、元気いいんだよ。
家主と心身共に労苦を共にしようって、三蔵を見習え!
っあ!?
三蔵。ミルク飲みながらくしゃみすんの、ヤメレ。


○月 ○日(曇り)

 今日は三蔵に金魚をプレゼントしました。
 怒ってても、三蔵はちゃんと食べました。
 小さい声で、おれいを言ってくれました。
 ぼくはうれしくなって、また金魚を爪でぴゅってしました。
 じょうたつするのってたのしいなあと、ぼくは思いました。
 早く三蔵のくしゃみがなおらないと、金魚がなくなっちゃいますね。


おい、ハチ。
お前近所の家荒らしてるって、ホント……みたいだな。
やめてよ、赤いウロコくっつけて戻って来るなっつの。
俺がなにするか、知ってっか?
婆さんちで、金網取り付け工事よ?この俺が、日曜大工よ?
はっはっはー、笑っちゃうねー!涙と鼻水が出ちゃうねー!
……咳をしてもひとり、って、コレ?つか、くしゃみ?


○月 ○日(曇り)

 三蔵のくしゃみがなおりました!
 三蔵は急にいばって、金魚をとりに行くと言いました。
 せっかくくしゃみがなおったのに、今日は金魚にふたがしてありました。
 三蔵はやっぱりぷりぷりしましたが、今日はえらかったです。
 じょうずにふたのかなあみをめくって、じっとしてました。
 だから金魚は三蔵がいないと思いました。
 金魚から見えないところで、三蔵のしっぽの先だけ、きげんよくふりふりしてました。
 三蔵はとっても狩りがじょうずになったので、金魚もちゃんとぴゅってできました。
 ぼくは、もっとぼくもじょうたつしないといけないなあと、思いました。
 それで、じゅんばんこに金魚を爪でぴゅってやってました。
 金魚、いなくなっちゃった。


この世で一番悲しいらんちう。た〜らりら〜らりら〜〜〜……
ははん♪
お前ら、らんちゅうって知ってる?
マニア; font-size: 12pt…ったら、怒られたんだがな。好事家が目の色変える、珍奇なヤツなんだけどな。
そう、金魚だよ、金魚。
金魚っつったら、違うって注意されちまったがな。
……美味いのか!?アレ、ホンットーに美味かったのか!?
せめて、壮絶に美味かったと言ってくれ!
俺はそうでないと、あの金額は納得出来ねえ!
くっそう!俺はくしゃみ沈静化と共に、復活したんだ!
稼いで稼いで稼いで稼ぐぜ!!

……じゃ。行って来るから。飯は家で食え?


○月 ○日(晴れ)

 天気がいいです。
 あったかいです。
 ぼくたちは、おひさまのあたるところを、たくさんしってます。
 おひさまがあたると、草もきらきらひかります。
 今日はたんぽぽの葉っぱを見ました。
 まっ白なわたげがたのしみです。
 三蔵みたいな色だなあって思ったので、それでよけいにたのしみです。
 ふわふわとか、ふかふかとか、ぼくたちは大好きです。
 ぼくは、とくべつきもちよくって、ふかふかしたところをしってます。
 およそのお庭に、きれいな花のさく木があります。
 犬がいるけど、おじいさんなのでおこったりしません。
 三蔵は、ちゃんとおじいさん犬に「こんにちわ」ってするかなあ。
 お花がさくと、たくさんはなびらがふって、ふかふかのじゅうたんになります。
 タオルみたいです。
 三蔵といっしょに行けるといいです。
 おひさまが、たくさんたくさん、あったかくしてくれるといいです。

 ぼくたちは、ずっといっしょにひなたぼっこができるといいですね。





桜の根本に、舞い落ちた花びらが敷き詰められてました。まだらの日溜まりが、気持ちよさそうでした






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