STRANGE FUITS 






僕があなたを抱く時、時折思い出す歌がある

僕の腕の中で、悦びを表し、悦びを隠し、悦びを抑え、悦びに果てるあなた
僕の腕の中で、苦痛を表し、苦痛を隠し、苦痛を抑え、苦痛に果てるあなた

何時もと違う眉の線が嬉しくて
誰も見てない開かれた唇が嬉しくて
誰も知らない鳴き声が嬉しくて
幾らでも鳴かせてしまいたくなる夜

言葉でいじめて辱めたくなったり
態度でしめしてじらせたくなったり
ドンドン僕ノ中ノ悪イ部分ガ、アナタノ中デオオキクナッタリ
僕ノ中ノイケナイキモチガ、アナタノ中デフクランデイッタリ




 僕の中の凶暴なところが、かなり目覚めてきているようで、自分でも少しアブナイかなあ、なんてことも思ったりして。 こんなにひとりの人を欲しがるのって、その対象が消えてしまったり、裏切ったりしたら、絶対に自分は鬼みたいに狂うんだろうなあ、と既に自覚もあることだし。
 でも多分、逃げたら追うし、逃がさないようにからめ取るし、万が一逃げられたら殺しちゃうかもしれない。
 僕も狂ってるし、あなたも狂ってるって。




 優しく優しく甘やかして、僕がいないとどうしようもなく駄目な人間になってしまうくらいに、滅茶苦茶にスポイルしてしまおうと決心したのは、相当昔だし。今はもう、相当駄目なひとになってくれてますか?まだですか?

 まだ、僕がいなくても生きてゆけるくらいにマトモなんですか?
 まだ、僕がいなくても狂ってしまわないくらいにマトモなんですか?
 じゃあ、まだまだこれからおかしくしてやらないとね。

 あなたの好きなことを沢山してあげる。
 悦ぶことを沢山。嫌がることを沢山。苦しむことを沢山。
 ほら、なんてきれい。




 自分には手の届かない高いところの、真っ白なきれいな羽の鳥に憧れて、ずっとそれを欲しがってた。
 鳥は冷たい目で僕を見下ろしていた。
 どうしても手が届かないものだから、僕は泣きながら訴えたんだ。
 ここに来て、と。僕はそこには行けないから、と。お願いだから僕の所まで降りて来て、と。

 そうしたら、鳥は僕のこと、可哀想になったんだ。 
 僕のことが気になるんだって鳥が言ってた。僕が本当は強いから好きだと鳥が言ってた。僕が孤独だからタマシイが呼ばれたと鳥が言ってた。僕が泣くと自分が流せない涙を流してるようだと鳥が言ってた。僕が悲しいと癒してやれたらと思うと言ってくれた。

 きれいな鳥は僕の願いを叶えてもいいかも、と思うようになっていた。
 叶えてくれるかと聞いたら、断れなかったんだ。

 羽をむしってしまうかもしれないよと言ったら、
     それでも飛べるよと言ってくれた。
 僕の手についた血が汚してしまうよと言ったら、
     それでも汚れないよと言ってくれた。
 おなかが減ったら殺して食べてしまうのかもしれないよと言ったら、
     食べなかったら死ぬんだったらそれでもいいよと言ってくれた。
     きっと死にそうになっても食べないだろうよ、と言ってくれた。

 そうして真っ白なきれいな鳥は、僕のそばに来てくれたんだ。

 僕はきれいな鳥の羽根を両手で鷲掴みしてしまった。
 握りしめた両手を、絶対に離さないように力を込めた。
 今まで泣いていた僕は、それからずっと嗤ってるんだ。真っ白な羽根をむしることを夢見て、でも羽根は眩しくて僕にはむしることが出来なかった。その替わりに僕は羽根になすり付けようとしたんだ。せめて僕と同じ色にしてしまおうと。でも、白い羽根はいつまで経っても真っ白なままで、だから僕は未だ血をなすり続けている。
 汚れてしまわないようにと本当は願いながら。




 僕の汚れを分け持ってくれようと降りてきてくれた、生贄。




 ほら、知ってますか?
 人間が、同じ人間を偏見から殴り殺してしまう悲しい歌。
 残忍と凶悪と醜悪の固まりが無知の衣をまとって沢山の棒で人を打ち殺してしまう歌。
 ほら、あの木にぶら下がっている奇妙な果実はなに?
 あの真っ赤な果実はなに?
 果実の怒りと悲しみの静かな歌。 




 僕はあの歌を思い出すんですよ。僕の残忍と凶悪と醜悪と無知が、あなたを果実にしてしまっていないかと。
「偏見」で人を殺せる無恥と、「愛」で人をからめ取る無恥と、そんな唾棄すべきエゴイズムを僕は持ってやしないかと。




 だって、僕の上で汗まみれになって泣いているあなたがあんまり苦しそうだから。嫌がってるのに無理矢理動かしたり、突き上げたりして、もっともっと声を聞かせて欲しくなってしまうから。段々とろけそうになっていくあなたの全てを観察して、羞恥のどん底まで落としたくなってしまうから。自分のヨクボウを抑えたり、あなたのヨクボウを考えてあげたりとか、したくなくなってしまうことがよくあるから。全部見たりとか、全部見せたりとか。
 血が流れるまでやってしまうから。




 ほら、今もあなたは苦しげに悦んでる。僕の上で。無理な格好させられて、可哀想なのに、下からうっとり見上げてるんだ。僕は。
 真っ白な躯が赤みを増して汗ばんだり。
 堅く閉じた目蓋がゆがんでしまったり。
 もっとゆがませたくて、それを我慢出来なくて。
 僕の上で揺れてるあなたがきれいで、まるで奇妙な果実のように特別で。









 暗い部屋の中、青白く光るシーツの上でもあなたの背中は輝いて見える。どんなにぐったり脱力してても、しなやかな強さを失わないでいてくれる。もう、特別な僕だけのあなたではないけれど、奇妙な果実のようにも見えない。




 「てめェのムツゴトは怖ェよ」


























 終 







全ての人種的偏見と、性的嗜好による差別に反対いたします。

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