PRESENTS by るなさんv





「・・・・何か今日すっげーご機嫌斜めじゃね?」
「いつもの事でしょう?機嫌がよくてニコニコしてる方がよっぽど怖いですよ?」
「・・・・まぁなぁ・・・・」

苦笑交じりに二人が捕らえた視線の先には、いつもの仏頂面を10倍キツクしたような顔で 無表情に新聞を読んでいる三蔵の姿。

「・・・・何かあったのか?」
「さあ・・・・何で僕に聞くんですか?」
「だってあいつがああなる原因っつったらお前しかいねーじゃん?」
「おや・・・・酷い言われようですねぇ。僕にだって判らないことはありますよ?」
「そなの?」
「ええ」
「ふぅん・・・・」
「・・・・何をコソコソ話してやがる(怒)」

向けられたのは明らかに怒気を含んだ刺のある声音。
悟浄は大袈裟に肩を竦めると、ふざけたような溜息を漏らした。

「こえぇこえぇ・・・・邪魔者はさっさと退散しろってか?」
「・・・・」
「悟浄、あんまり刺激しないで下さいね。宥めるのは僕なんですから」
「お前得意だろ」
「得手不得手の問題じゃないですよ」
「・・・・クソ河童」
「んじゃ俺はさっさとお猿ちゃんとこ行って寝るとすっか。おっ邪魔サマ〜〜〜」
「お休みなさい、悟浄。悟空布団剥いでたらかけてあげて下さいね?」
「へいへい。おっやすみぃ〜」

ぱたん、とドアが閉まる音と、靴音が遠ざかる音を確認してから、八戒は三蔵に向き直った。

「さてと・・・・本当に一体どうしたんですか?」
「・・・・別に」
「そうですか?悟浄や悟空にわかるくらい不機嫌度増してるじゃないですか」
「お前には関係ない」
「・・・・へえ?」

カタンと硬質な、あまり聞き覚えのない音がして三蔵が顔を上げると。
モノクルを外してにっこりと微笑んでいる八戒の顔。

「・・・・関係ない事で他人を不愉快にするのって、貴方が一番嫌う事ですよね?」
「・・・・他人、な」
「違うんですか?」

まるで獲物をじりじりと追い詰めるように、八戒は三蔵に詰め寄っていく。

「他人なんて言葉、言いたくないですけどね。貴方がそんな態度でいるなら他人以下じゃないですか」
「・・・・結構じゃねぇか」
「貴方は相手が他人以下でも体開くんですか?」
「それとこれとは別だろう。それに・・・・」
「それに?何です?」
「・・・・俺が望んでしてるわけじゃねぇ」
「おや。じゃあいつも僕が無理強いしてるとでも?」
「それに近いだろうが」
「じゃあ今日は指一本触れるのやめましょうね?」
「願ったりだな」
「ふぅん・・・・」

暫く何かを考え込んでいた八戒が、とすんと三蔵の横に腰掛ける。

「・・・・何だ」
「いえ?ただ・・・・もう一週間もしてませんものね。慣れちゃった体にはきついんじゃないですか?」
「なっ・・・・」
「・・・・我慢しなくていいんですよ?」

耳元に、唇を触れるか触れないかまで近付けて囁く。
低く、笑いを含んだ密やかな声で。

「僕からは触れませんから・・・・ねぇ・・・・」

------三蔵、と。
いつも睦言の合間に囁かれる声で、名前を呼ばれて。
びくんと体が震える。

「・・・・声だけでも感じちゃうんですか?」

くすくすと笑うたび、吹きかけられる甘い息。
そして体の奥底に点る、小さな小さな種火。

「るっ・・・・せぇっ・・・・」
「顔、赤いですよ?仕込んだ甲斐があるって言うものでしょうかねぇ?」
「ふざけた事言ってんじゃねぇっ・・・・」
「どうしてです?何も知らなかった貴方を僕が仕込んだんですよ?忘れたなんて言わせませんからね」
「忘れたな・・・・そんな事はっ」
「・・・・じゃあ思い出させてあげましょうか?」
「いいっ・・・・」
「どうしてです?・・・・貴方、キスも知らなかったでしょう?最初にした時の事覚えてますか?」
「知るかっ・・・・」
「貴方、体がちがちにしてましたよね?まるで本当に・・・・」

------処女みたいでしたよ?

その言葉を聞いた途端に思い切り立ち上がる三蔵。

「どうしました?」
「・・・・んな下らねぇ事ばっかりぬかしてんじゃねぇっ」
「そうですか?僕にとっては大切な思い出なんですけどねぇ。初めてベッドに誘った時だって・・・・」
「もういいっ」










立ち上がって三蔵の正面から見据える。

「・・・・すごく緊張してましたよね。そのくせ、いざそうなるととても甘い声を上げてくれて」
「いいっつってんだろうが!」
「初めてなのにちゃんとイきましたもんね。素質あったみたいですね」
「・・・・八戒」
「何ですか?それからはとても僕が無理強いしたとは思えないほどでしたよね、貴方」
「やめろっ」
「泣きながらねだったりとかしてくれましたしね・・・・あの時の貴方、とても綺麗でしたよ」
「いい加減にっ・・・・」
「どんな高級娼婦でも敵わないくらい艶っぽくて、イく時の声も顔も最高で」
「・・・・やめねぇかっ!」
「ああ・・・・そんな泣きそうな顔しないで下さい。そういう顔に誘われたりするんですから」
「誰が誘った!!」
「貴方ですよ、三蔵・・・・。自覚してないんでしょう?天然でいいですよね」
「・・・・話しにならんな」

くすくすと忍び笑いを漏らしながら、仏頂面のまま部屋を出ていこうする三蔵に声をかける。

「・・・・どこかの"他人"に慰めてもらいに行くんですか?」
「ふざけるなっ・・・・!」
「・・・・ねぇ、三蔵・・・・僕がどれだけ嫉妬深いか知ってますか?」
「・・・・イヤっつーほど知ってる」
「それで僕を置いて誰かに抱かれに行くんですか?」
「抱かれになんかっ」
「・・・・いいんですよ?僕に気兼ねしないで下さい。でも、貴方を満足させられるのは僕だけでしょうけど」
「自惚れてんじゃねぇっ」
「貴方はどこが弱いか・・・・どうすれば鳴いてくれるか・・・・そんな事、僕しか知らないでしょう」
「・・・・さぁな。そんなん知るか」
「へえ・・・・?」

すっと細められる深緑の瞳。
剣呑さで言えば三蔵に劣らないほどに、冷たく見据える視線。

「・・・・八戒・・・・?」
「僕以外の誰かに抱かれた事があるって事ですか?」
「・・・・さぁな」
「そうですか・・・・」

ふっと浮かべる微笑は、いつもの穏やかさとは無縁の物のように見える。

「貴方が誘ったんですか?足開いて?」
「・・・・」
「あのきつい眼で誰かに嘲笑交じりに笑いかけて、抱いてくれって?」
「そんな事」
「気持ちよくなりました?貴方の弱いところ、見つけられちゃいました?」

無言のままの三蔵に、八戒は更に言葉を紡いでいく。
それこそ、逃げ場をなくして追い詰めるかのように。

「貴方、イく時って僕の名前呼ぶんですけど。相手の方にそんな失礼な事してませんよね?」
「っ・・・・」
「しちゃったんですか?・・・・それは気の毒に」

笑いながら、どことなく勝ち誇ったような満足気な口調。

「何て言って誘ったんですか?」
「・・・・」
「僕とどっちがよかったです?」
「って・・・・」
「泣きながらねだったりしたんですか?」
「っ、してねぇよっ!」
「いいんですよ、そんな義理立てしなくたって」
「してねぇっつってんだろうがっ!・・・・誰にでも足開くような安っぽいヤツだと思われてんのか俺はっ」
「だったらどうして何も言わなかったんです?誤解してくれって言わんばかりじゃないですか」
「お前がっ・・・・」
「僕が?」
「いつまでもあんなクソ河童と喋ってっからっ・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は!?」
「だからっ・・・・」
「・・・・もしかして、したかったんですか?」
「ばっ////////」

真っ赤になって否定しようとしても、八戒がそれを見抜けないわけはなくて。

「何だ・・・・だったらそう言ってくれればよかったのに・・・・」
「誰がしたいなんざっ」
「じゃあ、このままでいます?一晩、ずっと浮気疑惑責め立ててあげますけど?」
「・・・・っ」
「三蔵?」
「浮気なんかしてねぇっ。・・・・お、お前じゃなきゃ・・・・////」
「・・・・もう貴方は・・・・反則でしょう、いきなりそんな可愛い事言うのは」
「かっ・・・・」
「つまり、貴方は早くしたかったのに僕がいつまでも悟浄と喋ってるのが気に入らなかったって事ですよね?」
「ちがっ・・・・」
「違うんですか?そう聞こえましたけど」
「・・・・もういいっ!」

いきなり胸倉を掴まれて、噛み付くようなキス。

「・・・・えーと、三蔵?」
「何が"指一本触れない"だ。そんなんお前が我慢できるわけねぇだろうがっ」
「・・・・これでも自制心はかなりあるほうなんですけど?」
「・・・・嘘つけっ」
「我慢できないのは貴方の方じゃないんですか?」
「・・・・そういう事にしといてやるよっ」
「・・・・はいはいvv」

結局口では勝てないから。
三蔵はそのまま八戒をベッドに引きずり込んだ。
















「・・・・ご機嫌直してくれました?」
「うるせぇ・・・・」

まだ荒い息のまま、睨み付けるように八戒に視線を向ける。

「随分溜まってたみたいじゃないですか。どうして素直に最初から言わないんですか?」
「・・・・言えるか、ばか」
「一言でいいのに・・・・恥ずかしがり屋さんですねっvv」
「っのばか・・・・大体何だ、一言ってのは」
「抱いてくれって言ってくれればいつでもお相手するんですけどね」
「・・・・・・・・・・・・どな」
「え?」
「だから、それは今度なっ!」
「・・・・三蔵」
「眠い。寝る。起こしたら殺す」
「どうせなら銃じゃなくて、体で殺して下さいね」
「・・・・そのうちな」
「楽しみにしてますvv」

もうとっくにヤられてるんですけどね・・・・。

荒い息が規則正しい寝息に変わった背中に、声に出さずにそう呟いて。

八戒は腕にそっと三蔵を抱きかかえたまま目を閉じた。






















 fin. 







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◆ アトガキ ◆
るなさんの「WESTSIDE HERO」で5000ヒット踏んでリクエストに頂きましたv
リクエスト「言葉責め」(笑)
「無料HPスペースの限界までお願い致しますっ!」
だって好きなんだもん(笑)
るなサマは私のリクエストに、かんっぺきに応えて下さいました…っ
鬼畜系八戒にどんどんのめり込んでいってしまいます(うっとり)
るなサマ、ありがとうございますv