■■■ RUN RUN RUN !
町中で妖怪達に襲われた三蔵一行は、いつも通りに返り討ちにした。
人々の目の前で繰り広げてしまった大殺戮に、流石に買い出しも出来ぬまま、出立。
次の街まではジープ疾走で三日の距離 ―――― 。
「食い物はぁ!?」
「酒は!?煙草は!!?」
「うるさい!」
後部で延々続く喚き声を収まらせようと、三蔵はナヴィ席から立ち上がって銃を突き付けた。
「喚くばかりだから貴様らはバカだと言うんだ!どうすれば飢えずに済むかを、少ない脳味噌振り絞って考えてみろ!!」
三蔵とて、食料もなく三日間過ごすことは避けたいと思っていた。
絶食自体は、三日ならばやり過ごせる。
ただ、体力の低下は確実であるから、妖怪の襲撃の可能性のある旅中では望ましくない。
空腹で研ぎ澄まされた神経は集中力もアップするが、また一旦乱れると単なる短気に成り下がる。
「腹減ったァ!」
…を連発することが確実な食欲ザルと行動を共にせねばならないことを考えると、出来るだけ避けたい事態だと、三蔵は思った。
悟空の空腹の訴えを想像するだけで、苛立たしさ腹立たしさに既に目蓋が痙攣を起こしそうだった。
何としてでも、避ねばならない。
悟空が上目遣いで三蔵を見た。
「……街に戻って食料買って来る」
「妖怪に狙われていることが知れ渡って、今更行っても店先で浄めの塩をブッかけられるだけだ。行くならてめェひとりが、変装なり仮装なりして行くんだな」
「ついでにハイライトも頼むわ」
「やだ!」
悟空の提案を三蔵が蹴り、便乗しようとした悟浄を悟空が蹴った。
悟浄が煙草の買い出しを頼んだ時点でマルボロも買わせようと思った三蔵の望みも、口に出す前に消えた。
むっつりと冷え込んだその場の空気を、無理に和ませようと八戒が笑顔を浮かべた。
「あ、じゃあ僕がこっそり。夕方の闇に紛れて街に戻って、他人に知られないようにお店に密かに入り込んでしまえば、お願いすれば売ってくれるかも……」
「「「やめとけ」」」
三人の制止の声が揃った。
暗闇の暗殺者、脅迫者めいた登場の仕方は、無辜の民に恐怖を味合わせてしまうだけだろう。
暫しの沈黙の後、三蔵が徐に口を開く。
「……これだけはやりたくはなかったがな」
他のメンバーは、ごくりと唾を飲み込み続きの言葉を待った。
ミッションが開始された。
街の近くまで一旦戻り、人目に付かぬように竜に戻したジープと共に、夜の闇の中走る。
民家の明かりが小さく見えて来た所で、一行は灌木の陰に隠れた。
「犬が放たれているかもしれん。用心しろ」
三蔵の低い声に、他の者達が黙って頷く。
悟空が、鼻を蠢かせた。
「ここには犬はいないよ。犬はあっちだ、鶏小屋の方」
「チッ……!」
「鶏は諦めましょう。当初の計画通りに……」
「散開!」
三蔵の合図と共に、メンバーは散らばった。
ほっかむりを被って、農家の畑へ。
農作物泥棒。
三蔵の『……これだけはやりたくはなかったがな』の台詞を聞いた時に、既に悟空はイヤンな予感に見舞われていたと言った。
「だって、前に躯に経文書かれた時も、三蔵同じこと言ってたし」
「悟空、お前が腹減る腹減るとやかましいからだろうが!」
「そうそう、僕らはあなたの為に、農作物泥棒に手を染めるんですよ」
「八戒、ソレ繰り返して言うのやめてよ……」
目の据わった三蔵、涙目の悟空、妙に嬉しげな八戒を前にして、悟浄の肩が落ちた。
悟浄も、今までの自分の人生を潔白に過ごしていると、思っている訳ではない。
窃盗に手を染めたこともある。
だが。
「売ってる物は盗んだことはあるんだがなあ。まさか自分が、ほっかむりして畑に入ろうとはなあ」
「どっちも立派なドロボーじゃないですか。ぐだぐだ言ってないで……、判ってますね?水も豊富じゃありませんし、次にいつ補給出来るかも判りません。出来るだけ水を使わずに洗える物を選ぶんですよ?」
例えば、キャベツ、トマトやキュウリ、なるべくそのまま食える物。
八戒の挙げた条件に、悟浄が涙する。
ウサギのように生野菜を囓って旅する四人の男。
覇気の出ないことこの上ない。
「悟浄、文句があるなら来なくていい。だが働かなければ貴様の取り分は無しだ」
「わーったよ。やりゃあいいんでしょ、やりゃあ」
悟浄は投げやりな気分を隠そうともしない返事をした。
「八戒、俺葉っぱばっかりじゃ絶対腹が減る。イモもいい?」
「うーん、泥付き野菜は洗えるかどうか。まあ、お芋なら泥が乾いたらはたき落として、焼いて皮剥けばいいですかねえ」
三蔵の開き直った様子を見て、悟空も覚悟を決めたようだった。
斯くして深夜のミッション・農作物泥棒が決行された。
よく手入れされた畑の土は、黒々と柔らかく、靴の踵を埋めた。
四人分の足跡、くっきり。
後で長安に苦情が行くかも知れないと、足跡を見た三蔵はちらりと思った。
が、ばっくれてしまえば何とかなるとも思った。
「三蔵、これ持っててください」
「ぐぼっ……!」
考え事をしていた三蔵の腹を、声と同時に重たい衝撃が襲った。
大きな大きなキャベツだった。
「シッ。三蔵、落とさないで下さいね」
また新しいキャベツを、しゃがみ込んでもぎ取りながら、八戒が微笑む。
その様子を見ていた悟浄も、乾いた笑いを浮かべながらトマトの苗の並ぶ畝へと向かった。
揺れるジープでの運搬・保存を考えると、完熟では拙いのだろうか?
いっそ苗ごと引っこ抜いてやった方が、一度に大量に運べるかも知れない。
暗闇で青いトマトと赤いトマトを見分けるのに苦心しつつ、もぎもぎ。
一方、悟空は。
イモ掘りに熱中していた。
茂る蔓を引きむしり、太い茎を探し出す。
丁寧に手で土を掘り、立派に太ったサツマイモを見つけては喜ぶ。
次々と黒土から現れるイモ達に、悟空は愛しさが沸き上がるのを感じた。
「畑っていいなあ……」
大地の仙岩から生まれし異端児、自然の素晴らしさに目覚めた瞬間。
「じゃ、次はジャガイモ」
根を掘り下げてから、引き抜く。
ぼごぼごっ。
柔らかな土から、連なるように可愛らしいジャガイモが現れた。
大きなジャガイモ、小さなジャガイモが鈴なりだ。
「おお、すげえ。次行こ。……うんとこしょ、どっこいしょ」
口の中で『それでもカブは抜けません』と機嫌よく呟き出す。
「うんとこしょー、どっこいしょー」
ぼごぼごっ。
「うんとこしょー、どっこいしょー」
ぼごぼごぼごっ。
「おい、そろそろ行くぞ!」
三蔵が号令をかけた時、悟空は今までで一番手応えのあるジャガイモを引っ張っている所だった。
「うんとこしょー……、あ、ちょっと待って、これだけ。どっこいしょー!!」
それは。
畑の生んだ奇跡だったのかもしれない。
太陽と雨に恵まれ、日々お百姓さんが手塩にかけて育てた、愛の結晶。
間違いなく、その畑の中で最大級最上級に育ち、頑丈に根を張ったジャガイモを、悟空は勢い良く引き抜いたのだった。
ぼごぼごぼごぼごぼごおぉっ!
滋養に富んだ黒土が飛び散り、両腕一杯に野菜を抱えた三蔵達の上に、降り注いだ。
「げっ」
「うわっ、ぺっ!」
ばらばらと降り続ける土塊に、思わず一行は声をあげた。
「 ―――― しまった!!」
犬が騒ぎ、寝静まっていた民家に明かりが灯り始めた。
「わ、ごめん!」
「いいから逃げろ!イモを落とすんじゃねえ!!」
三蔵達は野菜を抱えて走り出した。
作物を踏みつけにするのだけは憚られたが、畑さえ抜け出てしまえば、ジープを車輌形態にして逃げることも出来る。
犬も吠えるばかりで、鎖から放たれた様子もない。
楽勝と踏んだ三蔵が、立ち止まり振り向いた。
「さんぞ……?」
しんがりを努めていた悟浄が、三蔵の様子に気付いた。
真言を唱えている。
「まさか一般人に向かって!?三蔵ッ」
「オン、マ、ニ、ハツ、メイ、ウン! ―――― 魔界天浄ォ!!」
キャベツを抱えたまま、不自由そうに印を結ぶ三蔵の周囲に風が吹き、ざわざわと三蔵の肩の上で蠢いていた魔天経文が、神速で一点へ向かって伸びた。
「さんぞ……ああッ!?」
伸びた経文は畑を飛び越え、吠える犬の鼻先をすり抜けて鶏小屋へ向かった。
小屋の戸の金網を叩き壊す金属音と、驚いた鶏達の雄叫びが夜をつんざいた。
民家から、鶏泥棒を掴まえようと牛刀を構えた主人が飛び出し、叫んだ。
「あっ、こいつっ!?」
暗闇にぼうっと光るびろびろ長い物体が、彼自慢の太ってめんこい若鶏三羽ばかりの首に巻き付き、どこかへ連れ去って行く。
彼には止めるどころか、遠離って行く白い羽毛の塊を目で追うことしか出来なかった。
「……よし!」
走り出した車上で三蔵は、経文が翻り戻って来ると小さくガッツポーズを作った。
三羽の鶏が経文から離れて、後部座席に放り込まれる。
「三蔵、すげえッ!」
悟空の称賛の声に三蔵の小鼻がひくりと動くのを、運転席から八戒は見た。
「三蔵サマ、器用過ぎ。初めてじゃねえだろ?」
「バカか。こんな事に経文使うのは初めてだ」
『では、今までは経文ではなく、御自ら手を下して?』
『長安に落ちつくまではひとり旅をしていたと言ってたし』
『時には畑泥棒せざるを得ない、ツライ旅だったんだな』
悟浄と八戒が、どうツッコミを入れようかと迷った瞬間、三蔵が口を開いた。
「てめェら、食いたかったらその鶏シメとけ」
「もうシマってるけど」
「……ぇ?」
首に巻き付けた魔天経文で、きゅっ。
三蔵法師が魔界天浄で、きゅっきゅっきゅっ。
三蔵の驚きの声が余りに弱々しく悲しげだったので、その場の誰もがツッコミを入れることが出来なかった。
心配した八戒が、運転しながら横目で確かめる三蔵の唇は、暫く途切れがちに何事かを呟き続けていた。
『ごめんなさい。お師匠様、ごめんなさい。ごめんなさい……』
微かに風に乗った声が、一行を沈黙に追いやった。
真夜中過ぎの、香ばしい焼き鳥の香り。
謀らずともシメ終わってしまった鶏の為、八戒は素早く血抜きその他の処理を済ませた。
「今日の糧に感謝して、余さず残さず、有り難く頂きましょう」
食べられてしまう鶏ちゃんへの厳かな感謝の言葉は、シートに沈み込んだ三蔵の耳にも届いた。
シメ立ての肉は固いとはいうものの、ばらして焚き火で炙った鳥は黄金色の焼き目が付き、見た目からして食欲をそそった。
残りの二羽は移動中ジープの後ろに吊り下げる予定で、翌日辺りが食べ頃だという。
一羽を四人で取り合って食べるうちに、三蔵の気力も回復した。
収穫直後のキャベツも、甘く瑞々しい歯ごたえが美味だった。
満腹と空腹のメンタル面へ及ぼす影響力の大きさを、三蔵は改めて重く受け止めた。
やはり、西への旅を全うする為には、農作物泥棒、ニワトリ泥棒という手段は必然だったのだ。
自分の採った道は正しかった。
そう自問自答で頷きながら、三蔵は無意識に懐を探った。
そこにマルボロは、無かった。
食後の一服をしようにも、煙草はもう無い。
無いったら、無い。
どれだけ吸いたくても、無いものは無い。
三蔵は不意に、自分と同じ様な仕草で胸ポケットを探る悟浄に気付いた。
ハイライトも切れたらしかった。
「はい」
八戒が悟浄に何かを手渡した。
悟浄は掌の上の物体を暫く眺め、無言でジープへと向かった。
悟浄を目で追う三蔵に、八戒が声をかけた。
「三蔵も要ります?はい、爪楊枝。 ―――― シケモク用です」
三蔵も黙ってジープへ向かい、黙って灰皿をさらった。
無言でジープの傍らに座るふたりの手許の、短い煙草から少々焦げ臭さの強い紫煙がふた筋、立ち上った。
天に昇る紫煙は、やがて消え果てた。
囲む焚き火の火を小さく落とした一行の上空に、真空の夜空星空が広がる。
澄んだ星空は、魂を奪われそうな程に美しかった。
「すぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁ」
静寂に見えても、遥か上空では気流が渦巻いているのだろう。
その夜の星は瞬いていた。
「すぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁ」
漆黒の空に、瞬く星。
その星々の間を縫って、流星がひとつ。
儚く燃え尽きる。
「すぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁ」
「悟浄、煩い。寝らんねえよ!」
「だってもう、吸い殻も品切れなんだもん……」
二本指を立て煙草を吸う仕草を繰り返す悟浄に、悟空が鳥のモモの骨を投げ付けた。
「悟浄。未成年へ与える悪影響を考えて下さい。恥ずかしい」
「キュウ!」
竜の姿に戻り八戒の懐で眠っていたジープも、眠たげな顔で悟浄を睨み付ける。
「吸いたい時に切らしてると、次吸える時まで永遠に吸いたいまんまなんだよ!」
冷たい視線を受けて怒鳴り出す悟浄に、三蔵は嘲笑を向けた。
「未練たらしい。貴様らしい見苦しさだな」
「それが違えんだよ」
三蔵へも怒鳴り始めると思われた悟浄は、急に口調を変えた。
吸い殻全てを、シケモクも不可能な程短く吸い終わってしまった悟浄は、途方に暮れた。
唇淋しかった。
とにかく、ニコチンを肺に摂取したかった。
燃え尽きた煙草のフィルタを咥えていても、焦げ臭さが鼻につくだけだった。
焦げ臭くない物……先刻食べ終えた鳥の骨は、とっくに試しに咥えた後だった。
煙草とは違う固い感触と重たさが、唇と歯に伝わるだけだった。
違和感から哀しみすら感じた。
もう、他に試す物は何も無かった。
空虚さに堪えかね、悟浄は指を唇に触れさせた。
「すぅぅぅぅぅ」
唇が、歯が、舌が、慣れた角度で開き、透明な空気を細く吸い込んだ。
何の味もない、何も含まれない空気が、肺に流れた。
ただ、習慣通りに躯が仕草をこなした。
「はぁぁぁぁぁ」
吐き出す呼気も、何の香りもなく、髪や躯にまとわりつく事もない。
何も無かった。
違和感すら無く、それが却って喫煙習慣の代替行為になり得る可能性に、悟浄は気付いた。
「つー訳でさ。違和感がなければ、脳味噌も騙し易いんじゃねーかと思う訳よ。味もニコチンも重さも無いモノの方が、違う味、焦げ臭さだけ、別物の感触重たさ伝えるモノより、マシなんだよ。ニコチンを脳内補完した快楽汁が出んだよ。すーはーは決して無駄じゃねえ」
「……ほお。それで?」
熱弁を終えた悟浄に、三蔵は冷たい目を向けた。
「三蔵もしてみろって」
「死んでもしねえ!」
返事と同時に、焚き火の輝きを返す紅い色の頭にハリセンを炸裂させる。
「ってえ〜〜」
「馬鹿馬鹿しい。寝る。くだらんことで起こしたらブッ殺す」
頭を抱える悟浄を後目に、三蔵はごろりと横になった。
盛大に上がった笑い。
笑いを堪えて、悟浄の身を心配する声。
シツコク続くすーはー。
そんなモノを背に聞いて、三蔵は固く目を瞑った。
やがて全員が寝静まったか、静けさが満ちた。
焚き火で燃える、枝の爆ぜる小さな音しかしなくなった。
三蔵の、躯に沿って垂らした腕の先で、指がつい動いた。
指を唇に持って行くことなど、絶対にする気はなかった。
ただ、唇が勝手に慣れた隙間を作り、舌が口腔の奥までニコチンを迎える動きを形作った。
最小限の動作で、小さく小さく息を吸い込む。
「すぅぅ、ふう」
「………」
「………」
「………」
「……………。」
「どうでした?」
三人と一匹の視線を、三蔵は背中に熱く感じ取った。
いや、背中に急に、熱が貼り付いた。
「すーはー、もうしねーの?」
悟空が三蔵の背中に耳を付け、呼吸音を聞き取ろうとしている。
「悟空、てめェ!?……このっ!」
起き上がって悟空にハリセンを叩き付けようとした三蔵だが、新たにかけられた重みに倒れ、背を強かに地面にぶつけた。
「お、悪ィ」
「手荒な真似してすみませんねえ」
「貴様ら、馴れ馴れしく触ンなっ!!」
八戒悟浄までもが三蔵の躯にのし掛かり、体内雑音を聞き取ろうと耳を付けて来た。
要は、体のいい肉枕だった。
「『すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ』」
「『どくん、どくん、どくん……』。怒ってばっかだと心拍数も血圧も上がるぜえ?」
「あ、こっちはちょっと可愛いですよ。『ぐゆゆゆゆん』ですって。夕食、ちゃんと消化してるんですねえ。栄養しっかり身についてくれるといいですねえ」
「てめェら全員、ブチ殺す……」
凄んだ所で、三人分の頭を載せられ身動き取れずにいたのでは、迫力ないこと甚だしい。
最後に、ジープがちょこちょこと近付いて来たのに三蔵は気付いた。
遠慮がちに顔の傍まで近付き、頬を舐める。
小動物の労りと慰めだった。
それを理解して、三蔵は一気に脱力した。
大地を褥に、銀河を見上げる。
三蔵はその雄大さに圧倒されながら、躯にかかる重みと温もりをも感じていた。
「どしたん?急に静かになったじゃん」
「てめェらが重た過ぎんだよ」
「キュウ?」
ジープが三蔵の頬を舐め続けた。
「さっさと寝ろ。明日も早い」
ジープにかけた三蔵の言葉を、全員が笑いながら聞き、そして目を閉じる。
長かったいち日が、終わる。
閉ざした目蓋の裏で、過ぎた出来事を反芻する間に、眠りに落ちる。
また明日も、騒々しいいち日が始まるのだろう。
また騒々しく、西へと向かうのだろう。
◆ 終 ◆
◆ note ◆
三蔵一行の表に表れぬ旅のいち日でした…ば、バカだ…
明るくしたかったけど、ほんの少しだけ三蔵には可哀相過ぎたかもと
いう気もします。
お師匠様、ごめんなさい。