「……っ!」
きつく、きつく、白い歯に噛み締められる。
突き放す勢いで、僕の胸をまた押し返す。
息が、苦しくありませんか?
問えば即座に睨み返す。
その勝ち気が、
僕を、
狂わせるというのに。
ゆっくりと唇を覆うと、三蔵の小さな喘ぎの、末尾が上がった。
だって、ねえ?
息なんか継がせない。
快楽から逃れるように洩らす、そんな吐息閉じ込めてしまいたい。
覆い尽くしてざらりと舐めると、また一際甲高く、
これは、やはり
悲鳴なのか。
悲しそうな、追い詰められたような。
訴えるような。
きつく噛んだ唇を、宥めるように舐め続けた。
唇で挟んで、隙間から誘うように。
くすぐるように。
そのひとつひとつに、身を震わせながら三蔵は抗う。
揺らされることに、半ば流されつつあるというのに。
可愛らしい、気の強さ。
この人は知らない。
堅いつぼみが開く、その瞬間の僕の暗い喜びを。
暖かな窪みと、肩の関節が敏感に動く軋み。
そこに辿り着いた掌を、暫く留まらせて、続く軋みを楽しんだ。
僕が躯を揺らしても、唇をなぞりあげても、その度解放をねだるように肩は軋む。
潤んだ瞳を目蓋が隠し、目尻から小さく涙がこぼれた。
睫毛が濡れて、更に長さが強調されていた。
欲情に染まった頬に、たったひと筋流れる涙の、うっすらとした光が美しかった。
三蔵の肩をくるみ込んでいた掌の、躯の前を撫でる親指をまた移動した。
腋の下の、体温と湿り気。
ごく薄い、柔らかな金色の体毛を、逆撫でた。
性感とくすぐったさを同時に感じて、三蔵はこれまで以上に身を捩らせた。
逃れようと。
耐え難いと。
これ以上は気が狂うと。
涙をこぼしながら、啼き始めた躯を制御するには、もう逃げ出すしかないのだと。
捉えられたままの両腕に挟まれた、小さな貌と金糸の髪が振り乱される。
「三蔵…?」
躯ごとシーツに抑え付けられても、まだ利かん気な瞳は僕を睨む。
「これ、嫌いですか?ではどうして欲しいですか?」
問えば問う程に、三蔵の唇は閉ざされる。
答えが溢れ出しそうで、喘ぎを噛み殺すのが精々で、三蔵はまた唇を噛んだ。
「……やっ……メっ!見える……ッ!」
ノースリーブから出る肩口に、目立つように紅い花。
「やめろっ!」
願いのような抗議の声も、気にせず痕を残し続けた。
「三蔵…?」
呼びかける声に、視点の合わない視線を寄越し、僕を見たまま、声を出さずに叫び続けた。
果実の甘さが滴る唇を、もう一度優しくなぞりあげた。
疲れ切った三蔵の舌が、漸く諦め僕に絡んだ。
声にならない悲鳴をやっと、甘い呻きで訴え始めた。
甘い香りで。
僕を酔わせた。