† days -rose 010507- †

'Cardinal de richelieu' gallica 1840
 『カーディナル・ド・リシュリュー』。
 「フレンチローズ」とも呼ばれるガリカ種の、幾重にも重なるはなびらを持つ紫色のばら。「高貴で鮮やかなリッチパープル。最も普通でないばら」…などと、本には書いてあったりして。なんとも心躍る説明文ではないですか。 
 バラ園や花屋さんでお馴染みのハイブリッド・ティーローズやフロリバンダは四季咲きの血統を導入されてますが、野生種に幾分近いオールドローズの多くは、春一期咲き。
 四季咲きの系統は、チャイナ系(そのまんま、中国原産のばら。ロサ・モエシィなど)や庚申バラ(ロサ・キネンシス)、日本の原種ばら(ロサ・ルゴサ=野生のハマナシ、ロサ・ニッポネシス=タカネバラなど?)が1700年頃ヨーロッパに導入されたことで品種改良が始まったそうだ。
 ちなみに、ばらの品種改良に貢献したのがジョゼフィーヌ・ボナパルト。ナポレオンの奥方ですな。しまいには離婚されたりして、かなり悲劇の人生を送った方のようですが、彼女がナポレオン皇帝の権威を借りて世界中からマルメゾン宮殿にばらを蒐集、品種改良に熱狂してくれたお陰で、現代の多彩なばらが存在するという訳。
 現在でもボタニカルアートで有名なピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759-1840)も、ジョゼフィーヌ皇后から作品の受注を受けたものの、作品完成は彼女が追放された後のことだったそうだ。
 ルドゥーテの作品は、荒俣宏氏の博物学モノの文庫(手許で確認出来るのは『荒俣宏コレクション、増補版 図鑑の博物誌』1994 集英社…だけですが、他にもあったような…?)、次点でデパートの美術コーナー・大きな本屋さんなどに置いてある『TASCHEN DIALY』(フルカラーで楽しく美しい日記帳。2001年の物は確か1400円程度だったのでお勧め)で、結構手っ取り早く見ることが出来るので、ご興味のある方はどうぞ探してみてください。

 「ロボット」という名前の発明者ということで有名なチェコ・スロヴァキアの作家カレル・チャペック氏は、園芸家たちが新しい品種の種や球根の蒐集に東奔西走し、新しい苗木の植え場確保に目の色を変え、旅行中の水遣りの悩みに叫び出しそうな思いをして時を過ごし、庭の植物の冬支度を終えやっと一息ついた所で「庭の花たちをゆっくりと鑑賞することを忘れていたことに気付く」と、ユーモアたっぷりにエッセイに描いた。(『園芸家12ヶ月』中央公論)
 幸か不幸か、狭いベランダスペースしか持たないよしきには、数少ない花をじっくりと眺める時間がある。(それでも狭い所にばらだけで13鉢、ぎゅうぎゅうに詰め込んでいる…が、マシな方だろう。球根モノにハマった方々の秋口の熱狂ぶりを思えば、可愛らしいものだ)
 チャペック先生の分ものんびり鑑賞。小さな幸せ。



 掲示板などで散々告白しておりますが、このカーディナル・ド・リシュリューにsanzoと名を付け、育てて来た訳ですな(笑)。まん丸な蕾が、ふっくら、ふっくらと大きくなり、葉自体もなんとも芳しく、毎朝、蕾を両手で包み込んでは「sanzo、今日もキレイだね」「sanzo、いい香りだね」……と。(狭いベランダ一周に30分かけるので、ちょっとアブナイ人)
 結構楽しいです。植物に親しみを持てるという点では、名前を付けるということ、お勧め出来ますね。







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