悟浄が唇を離すと、薄い舌が追い掛けてきた。目蓋を伏せると幼ささえ感じさせる顔に、開いた唇から濡れた舌が覗くのが、酷く扇情的だった。
「……ご、じょう……?」
覆い被さる体温がずれたことに気付いた三蔵が、名を呼んだ。
三蔵の衣服は前をすっかり肌蹴られ、ほころぶ花弁のように、剥き出しの肩や二の腕の下まで、重ねて押しやられていた。
温かな重みが失せ、肌寒さに三蔵は自分の躯を抱いた。月光に浮かび上がる細い躯に、華奢さの残る腕が巻き付いた。
悟浄はその腕に一度音を立てて接吻けると、鳩尾から臍まで唇を押し当てながら降りて行った。
腰を掴む悟浄の手が火傷しそうな程熱いと、三蔵には感じられた。熱は足首に触れ、薄い布地を潜って上まで移動する。時折ひたりと止まって脹ら脛や膝頭を温めて行く。肌寒さを感じていた三蔵はそれを心地よいと感じた。
鳩尾に紅い花を散らされ、感覚の波に溺れていた三蔵は、悟浄の掌が腿の内側の柔らかな肌を撫でた時に、思わず吐息を漏らした。
「あぁ……」
吐息に悦楽を聞き取った悟浄は、それに勇気付けられたかのように、三蔵の脚の間に躯を割り込ませた。柔らかな布地を引き剥がすようにして、しなやかな足を月光に晒す。
「……っ」
月の青白さに輝く膝頭が、閉じようと震え、悟浄の躯をきつく挟んだ。
悟浄は宥めるように腿を撫でた。大きな掌で何度も繰り返し撫でた。体温が往復するごとに、三蔵の脚からまた力が脱けて行った。
「三蔵、寒いか?」
敏感な膚に熱い息がかかった。三蔵は身を震わせながらかぶりを振った。
「俺は熱いよ。お前も、こんなに熱い」
腿を温めていた掌が三蔵の昂りを捉え、更に熱い唇がそこに触れた。
「……!」
確かめるように舌が這った。
堪らないほどの熱が三蔵の上を移動して行く。ざわめくような快感を引き起こしながら、熱は移動するとすぐに、ぬめりの冷たさを残して行く。
「……っ……ンっ」
呼吸ごと堪えていた悦楽が、三蔵の喉から洩れた。三蔵は自分の耳に入ったその音に、自分の出した声とは信じがたい響きが混ざっていたことに、羞恥を覚えた。恥ずかしさと感覚の混乱に、腿を擦り寄せようとした。
悟浄の手が、今度は確固としてその脚を固定した。力強く押し開き、濡れて震える昂りを口腔に含んで行った。
「アァッ……」
躯が三蔵の意志を越えて撥ねた。固く固定された腰は動かず、自分で抱きしめた上半身だけが身を捩った。
三蔵の「そこ」を覆った熱は、煽るように動いた。弾力のある「もの」が快楽を予感させる場所を往復し、かと思うと急に「その場所」を避けて敏感な先端を弾いた。
「ふ……っ」
眉根を寄せて目を瞑っていた三蔵には、与えられる感覚だけが全てだった。
すぼめた唇に追い上げられ、また先端から舌をねじ込まれ、躯の熱は上がって行くばかりだった。『じらされる』という知識は三蔵にはなく、ただ感覚に巻き込まれ、翻弄されるだけだった。
反らした背に、剥き出しの肩が地面に押し付けられ、細かな砂が粗く感じられた。夜の大気に冷やされた砂が、却って三蔵に、上昇する体温を自覚させた。
自分の肩を抱く指先が白くなるほど、力がこもった。
「三蔵。このままダせよ」
諭すような口調にも、自分の躯の反応を理解し切れない三蔵は首を振るうだけだった。
優しく宥めるような声のこの男に、全て委ねた筈だったのに。
三蔵は惑いながら、ふと紅い髪を目で追った。
脚の間の紅い色が、自分の腿の上に流れ、腹をくすぐった。
「ん……」
微かな声に顔を上げた悟浄と、三蔵の目が合った。
「見んなよ、照れるじゃん」
離れた唇と自分の昂りの間に、細い銀の橋が架かった。すぐに落ちた橋の冷たさと、また自分を覆おうとした悟浄の唇の艶に、三蔵は更に指に力を込めた。
悟浄は三蔵を見つめながら、三蔵自身に舌を伸ばした。つい先程三蔵を翻弄した熱い「もの」が、濡れた昂りに絡み、切羽詰まった快感を約束する場所を強く撫で上げた。
悟浄が目で促した。三蔵を見つめる悟浄から目を離せなかった三蔵が、躯を震わせた。
「っあッ……出、るっ」
くるみ込まれ、掌で追い立てられるようにして、三蔵は放出した。
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