postscript / くろいぬ
【ヒューズ】【15話】






『postscript』




 最後に顔を思い浮かべることの出来たひとたちが、幸せであればいいと願う。



 グレイシア。
 君への想いを全部君に伝えることが、俺は出来たのだろうか。
 楽しさを、喜びを、人生の素晴らしさを教えてくれてありがとう。
 安らぎをありがとう。
 もう君の声を聞くことが出来ない。
 あの朗らかな笑い声も、俺の名を呼ぶ声も聞けない。
 何時までも君が俺を呼ぶ声を聞いていたかった。
 俺の声に振り向く君を見ていたかった。
 幸せだったかい?
 俺が感じている程に、君は幸福を感じていてくれたかい?



 エリシア。
 側にいてあげることが出来なくなってごめん。
 予定では、きみが育ち、恋をし、この家を旅立って行くまで
 見守り続ける筈だった。
 いや、本当は。
 きみが選んだ男が例えどんなに優秀だとしても、パパは自分の目で
 きみの幸福を見守り続けるつもりだった。
 きみが母親になってもおばあちゃんになっても、パパは君が幸せに
 微笑み続けているかどうかを、願い続けるつもりでいた。
 小さなエリシアちゃん、いつまでもきみを愛してる。
 時間があるならきみが生まれてから今まで、きみにキスした回数を
 数え上げることが出来るほどに、きみのことを覚えている。
 きみ自身が忘れていたり眠っていた時のことでも、全部全部覚えてる。
 いつかそのひとつひとつをきみに伝えたかった。
 きみはいつもパパの天使。



 PS ロイ。
 おまえが一番心配だ。
 おまえの見た夢をもう共に追えないことが心残りだ。
 おまえの作るものをこの目で見たかった。
 おまえと一緒に作り上げたかった。
 おまえの尻を叩けなくなることが淋しい。
 おまえはでも淋しがらなければいいと思う。
 おまえとこれからを過ごす奴らの苦労には同情と羨望を。
 おまえがどれだけ偉そうにしても、あの世では俺が先輩なので
 今度はちゃんと俺を敬うように。
 うんとうんと俺より遅れて来るように。

 あんなこともこんなことも、誰にも洩らさず墓穴に持って行ってやるから。
 だから許してくれよ、なあ。





fin.