| お気に入り3 / 白猫 |
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【ハボロイ】【黒猫物語】『楽園』『お気に入り1&2』の続きとゆーかオマケ。 『お気に入り3』 これは一体どういうことなんだ、とロイは思った。 自分の部屋の自分のベッド。目覚めた場所としては、何ら問題はない。が、しかし。 自分のベッドの上で繰り広げられている光景は、どうにも信じ難いもので。 確か昨夜は、と記憶を辿る。 久し振りに残業もなく仕事を上がり、護衛と称して家迄ついてきた金髪の部下に、そのまま夕食を作らせた。旨い食事と軽い会話。アルコールが程よくまわったところで、確か寝室へと誘った様な気がする、のだが。 「…何も、なかったな」 行為があった翌日特有の痛みも倦怠感もない、ということは、ただ覚えていないだけではなく、行為そのものがなかったということだろう。 「その気にならなかったのか」 目の前で眠る部下に向けて呟いてみても、返されるのは寝息だけ。 「それとも…」 私よりも、ソレが気に入ったのか? さすがに眠っている相手に対してとはいえ、声に出すのは憚られて、口を噤む。 ソレ。 目覚めてから、ロイを、ここまで悩ませているもの。 それは、眠るハボックの腕にしっかりと抱きこまれた黒い猫のぬいぐるみだった。 『いや、ほら、あんまりにもお前にソックリなもんだからさ』 そんなとんでもない台詞と共に、はるばるセントラルから、送られて来たソレは、親友の愛娘からの贈り物だということだった。尤も、そんなものは言い訳に過ぎなくて、結局は、何かとひとを揶揄いたくて仕方がないらしい親友のいつもの悪戯心に他ならない。 届いたのが、東方司令部だったということもあり、当初はさんざん文句も言わせてもらったものの、実は結構気に入っていることは、この金髪の部下あたりには、どうやらすっかりバレているようだった。 だが。 「気に入ってるのは、お前の方だったのか?」 嬉しそうなカオで、真っ黒な猫を抱き締めて眠るその姿は、なんだかとても絵になっていて。 「……なんとなく、気分が悪いぞ」 コレは私のものだ。 どちらに対して思ったのかなどと考える余裕もなく、黒猫を引っ張る。 「…おい」 途端、まるで、離したくないとでもいうかのように、ぎゅっと力が込められて。 「このっ」 思わず、力任せに引き抜こうとしたとき。 「大佐…」 ハボックの口から洩れたつぶやきに、思わず力が抜けた。 「お前な」 ベッドの端に腰を下ろして、深く溜息をつく。 しあわせそうな顔で眠るハボックの無意識に漏らした声は、驚く程に柔らかく心にしみわたっていた。 「この馬鹿めが」 今度は、そっと手を伸ばして、抱き締められている黒猫から、ハボックの指を一本ずつゆっくりと引き剥がす。 「悪いがな。これは私のものなのだよ」 どちらにともなく囁いて、ようやく離れた黒猫を、そっと枕許に置くと、できた空間に自分の身体を滑り込ませて。 所在なげに彷徨っていたがっしりとした腕が、今度は自分の背中をしっかりと抱き寄せるのに、満足気な吐息をひとつ。 「ちゃんと起こせよ」 二度寝の先に待っているものは、優秀な副官の厳しい叱責かもしれないけれど。 今は、この心地よい眠りを妨げられたくはないから。 未だしあわせな夢の中にいる青年とお気に入りの黒猫と暖かいベッドと。 もう少しだけ、夢の続きを…。 fin. |