馴染む / 白猫
【ヒューロイ】【18禁】(『馴染む』)




『独占』





ゆらゆらと。
ランプの焔に照らされたお前とその影と。

ああ、そうだ。
いつまでも、これは私だけのもの。

なあ、そうだろう、ヒューズ。




「ヒューズ?」
「ん…なんだ?」
「お前、何をしている」
「キス、だな。気持ちいいだろ」
心地よい酔いに身を任せて、半ばとろりとした眠りのなかを弛たっていた自分の肌を滑る温かい温もり。気付いて掛けた声に柔らかく返された声がひどく心地よくて。
ああ、悪くない。
柔らかな愛撫をうっとりと受けながらも、もういちど声を掛ける。
「挨拶にしては、少々行き過ぎていないか?」
「ああ、大丈夫。お前にしかしねえから」
ああ、そうか、と目蓋を閉じかけてから、眉を顰める。
「…それは違うだろう?」
「なんだ? ロイくんは、俺とこういうことするのイヤになったのか?」
「そうじゃない」
「なら、問題ねーだろが」
そうだろうか。
そもそもこいつは今夜、結婚の報告に来たはずで。ついさっきまで、美しくて気立ても良く料理上手でしかもコイツに夢中なのだという婚約者をさんざん惚気ていたんじゃなかったか。
「結婚するんだろう?」
「ああ。なんだ、お前も結婚したくなったのか?」
「誰が…あッ…」
言葉を発しながらも、ゆっくりと肌を降りていった唇が、臍の脇を軽く噛んだ。吸い上げられて、舐められて。朱い痕がくっきりと残る様が、直接目にしなくてもはっきりと脳裏に浮かぶ。
「この、不実者が…」
「ローイ」
「あ…っ」
いつのまにか勃ちあがっていたものに、ふうっと息を吹き掛けられて、あがりかけた声を、必死に堪える。
「堪えんなって。お前の声聞くの好きなんだ」
「ヒューズ!」
にやりと質の悪い笑みを浮かべたヒューズの掌が、ゆっくりとそれを握った。
「や…めっ」
「どうした、ロイ。今日は素直じゃねえな」
「ヒューズ!」
手を放せと、言葉にはしないまま、ゆるりと動き始めた掌に、自分の手を重ねた途端。
「ああ。自分でしたいのか?」
なあ、ロイ。
低く囁かれた声に、躯が震えた。


「ほら。ちゃんと握れって」
何時の間にか、自分の猛るものを直接握らされて。その上から重ねられた大きくて熱い掌が、ゆっくりと扱きあげるように動いていく。
「ヒューズっ…」
「足、もっと開けよ」
「や…」
嫌だ、と言いながら。膝をたてて、ゆっくりと自ら開く。
「いいコだな、ロイ」
そのまま離れていく掌に、思わず動きをとめて見つめれば。
「止めるなよ。自分一人でもできるだろう?」
優しく囁く声に、感じたのは、気が遠くなりそうなほどの快感。


大きな布張りのソファの上、幾つも重ねられたクッションに凭れて、片膝を立てる。足を大きく広げて、向かいのソファに腰を掛けて煙草をふかすヒューズの視線を感じながら、ゆっくりと手を動かして。
見られていることに感じるのは、羞恥という名の快楽。
「つッ…」
ゆっくりと扱きあげるものは疾うに張り詰めて、とろりと掌に感じる液体に躯が震えた。
「ヒュー…ズ」
掠れた声で呼んでやると僅かに顰められる眼。それがひどく可笑しくて、ほんの少し、腰を浮かせて誘うと
「ロイ…」
情慾を隠せない声が、それでも呆れた様子を装う。
「ヒューズ」
再度の呼び掛けに一瞬立ち上がりかけたヒューズが、もういちど座り直して、ニヤリと笑った。
「自分で慣らせるだろ、ロイ」
お前だって、余裕なんて、ないだろうに。
煙草の先が僅かに震えているのを見て、小さく笑う。笑いながら、濡れた指を、そっと後ろに宛てがって。

「つッ…あ…」
ヒューズに見えるように、また腰をあげると、そのまま躊躇うことなく触れた場所が、びくんと反応した。なんて浅ましい躯だろうと嘲笑いつつ、こんな風にした張本人に見せつける。
「ロイ…」
掠れた声にあわせるように、指を滑りこませて。
「ん…っ…」
息が詰まる。顔が朱く染まるのを感じて。まるで酸素の供給が止まってしまったかのように、躯中が圧迫されて、耳鳴りがする。心臓が鳴る音、血液が流れる音、体温が上昇していく音までが聞こえるような気がして、ぎゅっと目を瞑る。過ぎる程の快感。
それでも、ゆっくりと差し入れていく指は、自分が欲しいものとは違うのだと。馴染んだものを強請る躯の熱さを持て余して。

「あ…あっ…」
わざと声を響かせる。
早く来い、いますぐに。焔をつけたのは、お前なのだと。
諦めなければならないと、心臓まで凍り付かせたあとのこの焔は、もう2度と消えることなどないと思い知れ。

例えこの先何があろうとも。遠くない未来、お前が何よりも大切にすることになるだろう存在よりも。

なぁ、ヒューズ。

こんなにも狂おしくお前を求めるのは、未来永劫、私だけなのだと知っているか。



「ヒューズ」

「ロイ」
煙草を灰皿に押し付けて、近付いてきたヒューズの余裕のない噛み付くような接吻けに。
勝利を確信して、気付かれぬように笑う。



例えどんな存在も。
この絆には勝てはしない。





お前は、私だけのもの。







fin.