告白 / くろいぬ-2
【ヒューロイ】【士官学校】【告白『言えない』の11ヶ月前かもしれない…】






『告白』



「なあロイ・マスタング君、もうじきホワイトデイじゃないかね?」
「関係ない。おまえに何もやらなかったし、貰わなかった」
「小せぇことを気にするな」
「気にするわ、馬鹿者!」
 不意をつかれて押し倒されて、ロイはベッドに倒れ込んでから自分の上にのし掛かる男の顔を見た。
 眼鏡の向こう、ロイが密かにきれいだと思っている薄翠の瞳が、据わってる。

「ホワイトデイはまだまだ先じゃないのか、マース・ヒューズ?」
「肝心のバレンタインをなあなあに済ませてしまった今、正確な日付に拘るよりも本能に従えと俺のソウルは訴えてる」
「おまえは野獣か!」
 ヒューズの胸を押し返しながら、ロイは怒鳴った。
 多分このまま、戯れ言と過ぎた悪戯の応酬程度で、ことは済むのだ。
 コトバアソビと、思わせぶりなやり取り。
 決定的なアクションに踏み切るにはまだ僅かに羞恥心と不安感が邪魔をする。
 ふたり甘えて戯れてていられるのは、いつかバランスの崩れる時までの猶予期間だけだという予感を、心のどこかで感じてはいたけど。

「ロイ!」
 ヒューズに掴まれた肩が痛んだ。
 自分よりも上背のあるヒューズの体重を受け止め、触れ合う胸から直接鼓動を感じ取る。
 俄に怯えと困惑が湧き上がり、ロイの黒い瞳が微かに揺らいだ。
 揺らぎを感じ取ったヒューズはそっと、掴む指を和らげる。
「怖いことなんか何にもしねえよ」
 躯を乗り上げ、額に額を押し当てて囁く。

「今より先ずっと」
「病める時も健やかなる時も」
「死がふたりを分かつまで、おまえと同じ夢を見る」
 ヒューズは厳かに目を瞑り、誓いの詞を唱えた。

 喉が渇く。
 舌も縺れて声が出ない。
 ロイが喘ぐように口を開くと、ヒューズはその唇に人差し指を宛てた。
「ホワイトデイのプレゼントだ。お返しのお返しは要らない」
 そのまま笑い出しあっさりロイを解放して背を向ける。
「お返しも何も、そもそもバレンタインに何も贈ってないじゃないか」
「じゃあ来年を期待した前渡しだったってコトで」
「一年も先の話をするなよ」

 
 ロイが半身を起こしても、ヒューズは背中を向けたままだった。
 鳴り続ける鼓動が相手に聞こえるのではないか心中不安に思いながら、ふたり押し黙り耳朶だけを紅く染めていた。
 バランスが崩れるのにきっと一年もかからない。
 同じ予感を感じながら。




fin.